カクテルの4大技法、ビルド・ステア・シェイク・ブレンド以外にも、カクテルの世界には繊細なテクニックで美しく演出する技がたくさんあります。そのひとつの技法が「フロート」。
フロートとは“浮かべる”という意味で、比重の違う材料を重さの順に混ぜることなく注ぎ重ね、層を作る技術のことを表します。フロートの場合は2層までのカクテルが多く、それ以上にいくつも層を作る場合は“ブースカフェ”と呼びますが、基本的に作り方は同じなので、コツさえつかめば意外と難しくない技法です。
そんな憧れの美しい2層のカクテルを作るフロートの、作り方のポイントやコツをご紹介します。
目次
フロートで作るグラデーションで楽しさを演出!
フロートは材料の比重の違いを利用し、美しく演出されたカクテルです。
例えば砂糖を大量に含んだ甘いシロップやリキュール・果肉を含んだフレッシュジュースは、ドリンクの中でも比較的比重が重いので、下に沈みます。そしてクリームやアルコール度数の高いスピリッツなどは比較的比重が軽いため、他のドリンクと同じグラスに注ぐと上に浮きます。フロートはこの異なる比重を利用し、美しい層を楽しむカクテルなのです。
フロートの基本的な技法
まず、グラスに比重の重い材料を注ぎます。この時に氷を入れるカクテルの場合は、先に氷を入れてから注ぎます。そして比重の軽いほうの材料をそっと注ぐのですが、2つの材料の比重の差が小さい場合、そっと注いでも混ざってしまうことがあります。そんな時はバースプーンの背を上向きにしてグラスに入れ、バースプーンに沿わせるようにして比重の軽い材料を注ぐとキレイな層が作れます。
また、基本的には比重の重い材料を先に注ぎますが、テキーラサンライズのように、先にグラスの中でテキーラとオレンジジュースをステアし、後から比重の重いグレナデンシロップをそっと沈める作り方もあります。こういった場合、後から入れる材料が沈みやすいように、グラスの側面に沿わせるように注ぐのがコツです。
ゆっくり正確に!フロートのコツ
キレイな2層を作る一番のコツは、焦らないこと。最初に注いだ材料の表面が落ち着いてから、できるだけ波立たせないようにソフトにゆっくりと、次の材料を注ぎます。
そして材料の比重は、同じ材料でもメーカーによって違いがあります。特にシロップなどは砂糖の量によって比重が変わってきますので、できるだけ正確に材料の比重を把握することも大切です。
また比重の軽い材料を、予めシェイカーでシロップなどと混ぜると、比重が変わって沈みやすくなります。そういった点も回数を重ねることで把握できると思いますので、まずはいろいろな材料を使って慣れていきましょう。
美しいコントラストを楽しみ、味わいの移り変わりを楽しむカクテル
キレイな層ができたらステアせず提供します。飲みながら自然に混ざっていくことで味わいの移り変わりを楽しんでも良いですし、一口楽しんだらマドラーで混ぜてしまっても構いません。
例えば、ミネラルウォーターの上にウイスキーの層を作ったウイスキーフロートは、上に浮いたウイスキーをはじめの一口はそのまま飲み、徐々にミネラルウォーターと混じり、味の変化を楽しむ方もいらっしゃいます。粋な飲み方だと思いませんか?
一方カシスオレンジは、カシスリキュールが下に沈みオレンジジュースが上に分かれた状態で提供されることがありますが、この状態のままで飲むと最初はオレンジジュースだけしか味わえないばかりか、最後に甘いカシスリキュールだけを味わうことになり、おいしいとは言い難いカクテルになってしまいます。見た目も大切ですが味も大切。目で楽しんだら静かに混ぜていただきましょう。